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[短報]オンブズパーソン回答を受けて

牲川 慶(オンブズパーソン調査申立人代表者)

2020年11月14日

オンブズパーソンから『三田市立幼稚園再編計画(案)』についての調査結果をいただいた。

思い返すと,調査を申し立てた9月17日時点[参考:記事]では,ただ茫然としていただけだった。8月7日に唐突にこの計画(案)が示され,パブリックコメント手続きの予定はない,市条例に基づく意見交換会の予定はない,と告げられた状況で,地域の皆様から寄せられたこの計画(案)へのさまざまなお考え・ご意見は,行くあてさえなかった。地域の幼稚園を廃園する/しないについて考える以前にまず,何を根拠に,何を目指して,何をしようとしているのか,まったくわからないまま,ただ農村地域全園廃園してこども園2つにする,とだけ宣告された状況だった。

そこでまず,高平幼・小の保護者らは,この計画(案)では,これからの三田市農村地域でとてもじゃないが安心して子育てできない,という意見を集約して市長宛要望書を提出した(回答は頂いたが肝心の,安心して子育てできるだけの詳細を詰めてほしい,という想いが伝わらなかったことは,当方の論述の在り方を含め,ひきつづき課題であると認識している)。

さらに,計画(案)策定手順についても,諸方面からご意見を頂戴し,「市民主体のまちづくりを進める」三田市の『まちづくり基本条例』に違反しているのではないかとの指摘があり,全国各地の類似例を参考に三田市諸条例を見直し,結果,条例違反の可能性が高いと判断して,第三者としてのオンブズパーソンに手続き無効として本計画(案)の取り下げ勧告を申し立てた。まさに,他に打つ手がなく,藁をもすがる思いで申し立てたものだった。

この申し立てが功を奏したのか,申し立て以降,市は大幅に方針を転換した。当初の,市民意見は聞かない,という態度を改め,『市政への市⺠参加条例』8条に定める「市⺠意⾒を聴く⼿続」を実施することとなった。高平地区での市による説明会冒頭,市から,この説明会は参加条例に定める意⾒交換会⼿続である,と説明された時には,耳を疑った。それほどの大きな方針転換だと思う。そして,この市民の意見を聞こうという市の対話にむけた姿勢は,オンブズパーソンによる調査によっても確認され,現在,説明会の再開催にむけ事態はなお進展している。

こうして,この申し立ての直接の結果かどうかは知る由もないが,事実結果として,市と地域住民が対話するチャンネルをひらくことができたのは,9月の絶望を思うと,大いなる実りとなったといえよう(逆に言えば,もしこの申し立てがなければ,あのまま進んでいたのかと思うとゾっとする)。

ただ残念なのは,今回の調査結果での,市は市民と十分に理解を深めながら取り組むべき,との結論は,かつての市単独土地改良事業の制度見直しについてのオンブズパーソン結果でも,中学校再編の混乱でも,再三指摘されていたことであり,今回も同じ指摘がなされてしまったということだ。市民主体のまちづくりを理念とする三田市にあって,こうした状況がつづいていることに,一市民としての責任を痛感する。

他方,この調査結果ではじめて主張されたことがある。市政の根幹理念である『基本条例』のなかで,「企画立案段階からの市民参加」を求める16条と,市民参加の具体を定める『参加条例』7条とで,規定する対象事項を同じくしているのかいないのか,条文からは読み取りにくいところに,一つの解釈が示されたことだ。つまり,16条に規定される「重要な計画」と,7条に規定される「市民の意見を聴く手続を実施することのみを必要とするもの」がそれぞれ存在していて,後者であれば「企画立案段階からの市民参加」は必ずしも必要としない,という解釈だ。この解釈に従って,今回の調査結果では,本計画(案)は,市長の裁量権と前例から,後者に該当すると結論づけられたため,先に述べた市の方針転換によって条例違反は免れているという判断となった。

そのうえで,市には,次回の意見交換会を形式的でなく実質的な場とするなど,市民と十分に理解を深めながら本件計画案に取り組むことが,そして市民には,意見のごり押しではなく市と協力・連携していくことが,それぞれ求められている。双方,これを重く受け止めなければならない。

私の暮らす高平地区はもちろん,三田市全体が「子育て先進都市」として,市制度・市施設・市職員・市民・・・すべてが有機的に機能して,少子化人口減少化にあっても,これまで同様,さらにそれ以上に豊かな教育環境を実現できるよう,私達も市も,対話と議論を尽くして力を合わせて協調していかねばならないと,あらためて思うところです。MBSテレビの特集では,市は庁内で地域住民からの意見・提言ほか情報を共有し,次回意見交換会に向け熟慮を重ねているようでした。私達住民もまた,市の応答やオンブズパーソン回答を受けて,考えを深め,対話を重ね,未来につないでまいりましょう。

本申し立てについて,さまざまにご協力・ご尽力いただきました皆様,あらためて御礼を申し上げます。

(ご意見・ご感想は,再編計画対応協議会 saihen@takahira.org まで)