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三田市立幼稚園再編計画(案)修正案についてパブリックコメントを提出しました

2022年1月4日締め切りの「三田市立幼稚園再編計画(案)」修正案への市民意見募集について,以下のとおりパブリックコメントを提出しました。

意見書

■全体について

農村地域での幼児教育の継続と充実に向け,市と住民の思いが込められた充実した計画案に修正された。また,総合計画が謳う「まちづくりの進め方[1,2]」が存分に実行された。迅速かつ丁寧な再編計画の実施を期待したい。

■案4ページ「再編の方向性」について

ただし,案4ページ,再編の方向性のうち,両新園の設置場所の理由について,以下の問題を解決しなければならない。

「保護者の就労支援の観点から」との理由は,これまでの調査・答申を踏まえたものでありまさしく適切だが,「就業先に近いと考えられ,交通利便性がよい」との判断には根拠がなく違法性を孕んでいる。

本計画案も示すとおり,就業地と幼児教育・保育施設(以下,園)の立地は密接な関係にある。また就業地と居住地の選択は当然相互に規定するから,園の立地は就業地・居住地の選択に強く作用する。すなわち園の立地は実質的に居住、移転及び職業選択の自由に関わる。これら憲法22条1項の保障する自由に実質的制約を課す園の立地にあたっては,農村地域住民の教育環境を保護しようとする所謂積極目的をもっており設置者の裁量が広く認められるものではあるが,その目的を達するための必要かつ合理的範囲内の手段として立地選定が行われねばならない。しかし,本計画案の園立地に関しては,その合理性が,以下2つの理由から保たれていない。

1つは,農村地域での就学前幼児の保護者の就業(希望)先が,両新園予定地に果たして本当に近いのかどうかが不明であり,したがって交通利便性も本当によいのかどうかが不明であるという点である。つまり,農村地域の就学前の子どもの保護者は居住地の近くで就労したいと希望しないのかについての事実が不明である点である。この問題は,全国の農村地域での意識・実態調査をメタ分析したり,実際に三田市農村地域で調査すれば解決するので,迅速に調査を実施せねばならない。

もう1つは,本計画案の合理性は三田市総合計画のなかで約束されるものであるにもかかわらず,矛盾を生じている点である。

例えば総合計画のもと実施された『第4次三田市農業基本計画』はじめ三田市の農業振興策では,地域での若手農業従事者の確保・育成を重要目標とし,「新規就農者の増加と円滑に就農できる受け入れ体制を整備」し,「【重点プロジェクト】...多様な担い手の確保と育成プロジェクト」として「女性...など多様な人材の経営参画や地域活動への参加を推進」するなど,農村地域住民の域内就労者の確保を喫緊の重要課題として取り組んでいる。当然,未就園児の保護者もまた,その重要な候補者として数えられる。しかし本計画案ではニュータウン地域近傍を「就業先に近いと考えられ,交通利便性がよい」と無根拠に断定しており,農業振興策の方針とは正反対の人の流れを前提としている。

また同様に『まち・ひと・しごと創生総合戦略』でも,就業のための転出によって地域の力が失われている現状を問題として,「就業・創業支援、農業の担い手づくりなど産業の活性化に取り組」み,特に農村地域については,「将来にわたって地域農業を担う意欲ある担い手の育成・確保に向け、農業に携わりながら生活する暮らしのスタートをサポートする仕組みを構築します」として,「UIJターンを促進する」などしての地域振興をめざしている。農村地域から域外へ,という就業スタイルを無根拠に前提とした本計画案は,ここでも市の政策・方針と矛盾している。

つまり,総合計画では農村域内に就業地を興し就労者を囲い込む/呼び込む方針であるのに対して,本計画案では農村域外に就業地を設定し就労に出かける生活を前提としており,両者は矛盾し,本計画案は総合計画のなかでの合目的性を達成していない。

以上のように,憲法の保障する居住、移転及び職業選択の自由に実質的制約を課す新園の立地選定というきわめて重大な裁量を行使するにあたって,本計画案の立地選定の理由には,事実の基がなく,また市政全体のなかで目的拘束の法理に反しており,裁量権の濫用と言わざるをえない状況となっている(つまり,今後も庁内組織の横断的な連携をより強化し密にし,と明記するだけでは収まらない状況といえる)。

本計画案は,前述のとおり,市と住民の協働が産んだ「子ども・子育て応援のまち さんだ」にふさわしい賜物です。三田市の農村地域が理想的な子育て環境となりうるおおきな可能性をもちながら,同時に事実の基がなく合目的性がないために農村地域を子育て不可能環境にする可能性も孕んでいるため,事実の調査および市政全体での合目的性の確保にむけた合理的な立地選定が実施されねばなりません。係争が続き計画の実施がいたずらに遅延されるようなことがないよう,ひきつづき市・市民がともに問題に真摯に向き合って,適正な本計画として迅速かつ確実に実現されるよう切に望みます。(担当:牲川慶)