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三田市立幼稚園再編計画(案)修正案についてパブリックコメント募集

三田市立幼稚園再編計画(案)について,意見交換会等での市民意見を踏まえた修正版が公開されました(三田市)。先だって開催された第2回三田市教育総合会議(三田市)での説明・協議を踏まえ,修正案の位置づけ等について,以下,ご案内申し上げます。

1.修正の理由

この修正の理由は,これまでの再編計画(案)について,市民から反対意見や心配・不安があったことに対して,応えようとするものです。そのために,この修正では,この計画(案)の目的や趣旨をより明確にし,わかりやすい記述とすることで,市民に寄り添うものにしようとしたとのことです。

2.修正の内容

おおまかな計画内容に変化はありません。

全体として,具体像がつかめなかった箇所(通園バス運用のあり方や,預かり保育の実施方法,閉園後施設活用についての市民協議の明記,など)にわかりやすく説明が加えられました。また,再編の基本理念についても,保育ニーズの多様化という調査にもとづいた現実への対応,ならびに,これまでの議論と経験から導かれた望ましい集団規模の確保,そして少子化傾向にあっても農村地域への定住促進を可能とするための教育施設の存続,という3つの柱がはっきりと示され,こちらも市の考えがより理解しやすくなるよう加筆されています(それらに多くが賛成できるかどうかは議論がなおあるにしても...)。

3.私の印象

中でも,市職員のみなさんが,地域住民との対話の機会を経て,農村地域住民がこれまでの市立幼稚園をいかに愛してきたのかを実感され,そうした気持ちになんとかして応え,再編計画をよりよいものにしたいという強い気持ちをもってとりくまれたことが伝わって来る修正となっており,この意味では,市・市民間での対話関係がより太くなってきたものとして,市民主体のまちづくりを掲げる三田市の住民として,嬉しく思いました。

4.スケジュール

今後のスケジュールとしては,以下が予定されています。

2021年12月1日(水)~1月4日(火)
パブリックコメントの募集(三田市)
2022年1月下旬
パブリックコメントへの回答
2月
計画(案)最終版を教育総合会議で協議
3月
本計画を定例教育委員会で策定
市議会に報告,決議
2024年3月末
広野・本庄・藍幼稚園の閉園
4月
三田西認定こども園(仮称)開園
志手原幼稚園一時閉鎖
2025年3月末
志手原・小野・母子・高平幼稚園の閉園
4月
三田東認定こども園(仮称)開園

5.問題 ― 新園設置場所の選定理由

ただし,理念・方法とも明確になったため,これまでのような不安・心配ではなく,策定に関する具体的な問題点も明らかになってきました。ここでは,私がもっとも重大だと思う1点について述べます。

それは,再編案の新園設置場所の選定理由についてです。案では,新2園とも「保護者の就労支援の観点から就業先に近いと考えられ、交通利便性がよい」ことを選定理由に挙げています。

これまでのアンケート調査等から,農村地域においても保護者の就労ニーズが高いことが判明していますので,一見まっとうな理由です。

しかし,農村地域で子育てをしようとする市民の就労先がなぜ広野と志手原により近いと判断できるのでしょうか。農村地域に定住し,そこで子育てしようとする人々の多くは,「わざわざ」農村地域に定住するものです。育児をしながらの就労先も「わざわざ」農村地域を望むもので,少なくとも私自身を含め私の周囲には,市街部での就労とは違う就労を求めている住民の声を聞きます。

にもかかわらず,志手原・広野を「就業先に近いと考え」る根拠はどこにあるのでしょうか。根拠となる調査結果が示されていないため,農村地域住民の就労希望形態を勝手に推測し憶測によって判定していると考えざるを得ません。農村地域住民はおしなべて市街地で働きたいに違いない,農村地域への就労先などない,という偏見を露呈してしまっています。

保育施設の配置は,保護者の就労場所を大きく規定してくることから,特に公立施設としてそれを配置する際は,十分な裏付けをもって実施しなければなりません。特に,三田市でも,今,農業従事者の育成・就農促進や,その6次産業化などによって関係人口を増やすなど,農村地域の活性化に必死に取り組んでいるところであるにもかかわらず,こうした安易な憶測にもとづいて,ますます農村地域への就労可能性を,自ら下げてしまう判断を行っているのは,誰にとっても有益ではありません。

つまり,就労のあり方を強く規定する公立施設を,憶測・偏見に基づいて用意することによって,農村地域という特定の居住地域住民に対して,職業選択の幅を制限するという人権上の問題のみならず,市がこれまではぐくんできた貴重な財産である幼稚園施設を,市の農村地域振興諸策と整合しないかたちで処分するという,市政全体にもたらす問題としても,この新2園の設置個所の妥当性については,あらためてしっかりと検討しなければなりません。

この問題は,憲法第22条のいわゆる「居住・移転・職業選択の自由」に関わる自治体の権力行使が,憶測のみに基づいているという点で,あまりにも重大なものとして(司法判断を仰ぐ必要があるのかもしれません)ここにとりあげました。

今回の計画案の修正では,この立地場所選定についての問題以外にも,計画実施を急ぐあまりか,十分な調査に基づかない判断が他にもまだ見られます。

しかし,今,住民と市との間で,有意義な対話関係が構築されつつあるのは実感しています。あとは,計画を裏付ける十分な調査さえあれば,ひきつづきの対話を通じて「よい再編計画の実施だった」と市・市民がそろって満足できる再編が実現するはずです。急いて無根拠に誤った判断をするのではなく,ひと手間かけて調査に基づいた実効性のある計画として,役所内の横の連携をとって進められたいと切に願います。住民だけでなく,市教育委員会・各審議会・そして市職員のみなさんが,この三田市立幼稚園再編計画をつうじて市農村地域の教育環境について真摯に熱心に取り組んでおられるのを眼前にするからこそ,切に切に願います。

まずは,すでにパブリックコメントの募集が公表されています(三田市)ので,皆さまのご意見を市まで届けましょう。(担当:牲川慶)